マロン君と魔女の家 [改訂版](完) 2018.10再掲載


【マロン君と魔女の家】 1~6(完結)
発行:2017.10 著)かずら

1.
北の国の妖精がやってくる10月のころ。

妖精の到来すると、 森の様子は一変。
森が緑から 赤、オレンジ、黄色と変わります。

鮮やかな雰囲気をお祝いするように、
やわらかい風が 木の幹を駆けまわります。
 
10月31日はハロウィンの日。
さまざまな妖精たちが、 この森に集まり、森の中でパーティがはじまります。
 
動物たちは妖精たちを恐れ、
パーティに巻き込まれないように、 家の中に閉じこもります。

ただ、森の魔女をのぞいては。

森の魔女は、 このりんごの森に住んでいます。
まだ誰も、その姿を見た動物はいません。
 
今日は、誰も見たことがない森の魔女が、
マロン君と出会うお話です。


2.

こぐまのマロン君が森で、 枝を拾っていました。

小枝で ハロウィンの飾りを作るつもりです。

友だちのうさぎさんがいいました。
「お星さまの形をドアに飾ると、魔除けになるのよ」

お星さまの形を作るには、5本の長さがそろった小枝が必要です。

その小枝をマロン君は探していました。

森の木の幹のあたりには、
いつもこの時期になると小枝があるんだけどなぁ。
 

マロン君は大きな木の幹のもとを、探し回りましたが、
なかなか見つかりません。

―なかなかみつからないな。
 
ぐるぐると歩き回っていると、
どこかで小さな声が聞こえてきました。

声はだんだん大きく、そしてはっきりと聞こえてきます。

大きな木の下に、 かぼちゃがありました。


3.

かぼちゃはしくしくと泣いていました。

「どうかしましたか」

マロン君がかぼちゃに声をかけると、かぼちゃは答えました。
 
「魔女の家に行きたいのです。」
―でも、どうやら道に迷ったようです。というかぼちゃ。

魔女の家はどこなのだろう。
マロン君は、 魔女に家にいったことがありませんでした。

かぼちゃはいいました。
「この森で大きなりんごの木のあたりに、魔女に家はあるとききました。」
―だけどどれも似たような木ばかりで・・・・。
困り果てたかぼちゃさん。

マロン君は、困っているかぼちゃさんを、ほうってはおけませんでした。 

「一緒に探しましょうか」
「本当ですか?とても助かります」
マロン君とかぼちゃは、森の中を歩きはじめました。


4.
マロン君とかぼちゃさんが森の奥に進んでいくと、
森は、今まで光が届いていたのに、いつのまにか、薄暗くなりました。

―なんだか気味が悪いところだなぁ。

風も少しばかり涼しくなったような気がします。
かぼちゃさんはおかまいましに、歩いていました。

しばらく歩いたのでしょうか。
気付くと、目の前に大きなりんごの木がありました。
 
ついに見つけました。
「わあ」「おおお」
マロン君とかぼちゃさんは、見上げました。
とても背が高く、幹は太い立派でした。

「魔女の家は、目印になる枝があります」
―それを探しましょう。
 
歩き回っているうちに、
木の根元に一本の白い枝が落ちていました。

マロン君が拾い上げると、
「あ」とかぼちゃさんが声をあげて、それです。といいました。

白い枝をかぼちゃさんに渡すと、さわさわと木の枝が揺れました。
「ようやく魔女に会えます。ありがとうございました。」
―これを持ってお帰りください。
渡されたのは、ローズマリーの草冠でした。

 

5.

家に帰るまでは、この冠をかぶっていくと、きっといいことがあります。
帰り際に、かぼちゃさんがマロン君にいいました。 

マロン君は 言われたとおり、
渡されたローズマリーの草冠を頭にのせ、帰ることにしました。

いつの間にかすっかり太陽が落ち始め、
どこからともなく冷たい風がふきはじめます。

太陽が出ている間は、心地よい木々の枝が、
日が落ちると、不気味に感じました。

マロン君は、小走りになりました。
心臓はドキドキしています。

そんなマロン君のそばに近寄ろうとする、
黒い影がありました。

その影はこっそりマロン君の後をつけてきていました。

背中にぴったり張り付こうとしたとき、
影はすっと音もなく離れていきました。

気付いたときは、
黄色い光が浮かぶ丸太小屋や見えてきました。

やっと家についたマロン君。
気付いたら手ぶらでした。

小枝のことはすっかり忘れてしまいました。
別のものでかわりを作ろう。

「ただいま」
マロン君は、家のドアを閉めました。

 

6.

その日の夜のこと。
マロン君がすっかり小枝のことを忘れ、眠りについているとき。

森には、夜の訪問者たちが集まってきました。

夜の中でぼそぼそと叫ぶものたち。

見えない白い影・黒い影たちが、 森の中をさまよいます。

森は眠りについているためなのか。

知らないふりをしているのか。

木々たちは沈黙をしています。 

暗がりからオレンジ色をした光が、やってきました。

暗闇を漂いながら、ゆっくりと動きます。
飛んだ先は、 一軒の丸太小屋でした。

丸太小屋はすっかり光を落とし、 寝静まっています。

丸太小屋のドアの入口で、 オレンジ色の光は止まりました。

1こ、2こ、3こ・・・

どこからともなく、 光が集まりはじめました。

光は、ぐるりと家の周りを囲むと、
ふわふわとオレンジ色の光をともし続けました。

眼下に捕らえたそのオレンジ色を見て、
にやりとすると、黒いマントとほうきは、紺色の空高く、飛び去っていきました。
<おわり>

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