夢のあとさき

 

遠くのほうでいつもの目覚ましが鳴り、片手でばしりとたたく。

目をこすりながら、うーんと体を伸ばした。

朝からへんな気分だ。なぜなら久しぶりに夢を見たから。

それは、男女が絡み合う夢。なんて湿度が高いのだろう。

夢占いで調べたら、きっと欲求不満という風なんだろう。

たしかに、10年来付き合った彼と別れてから、まともな恋愛しないで数年がたつ。

ひとりでいる生活が楽しくなり、もう男女関係はどうでもよくなっていた。

女友達はひとりでは寂しいだろうから。と紹介はもらったけれども。

相性がよくなくて、一夜限りだけならまだしも、デートすらこぎつけないことも増えた。

 

―もう男なんて。

女友達には詳しくは言っていないが、前のボーイフレンドとはひどい別れ方をした。

実は未練タラタラなのだ。

だから、他の人ともうまくいかない。いくことができない。

―なぜなら忘れていないから。

だからへんな夢をみてしまうのかもしれない。

前のボーフレンドが出てきたら、きっと喜んだだろう。

夢の中でしか会えないのだから。

 

でも、今回見た夢は違う。

どこかの知らない男が、夢にできていた。

わたしを求めて。

なぜわたしが求められたのかは、わからない。

ただ、男はわたしを求めていた。貪欲に。

思い出すうちに、自分で赤面してしまうのがわかる。

前のボーイフレンドだったら、どんなによかっただろうか。

彼が夢の男性のように、貪欲に求めることはなかったとは思うが。

 

コーヒーを飲みに、キッチンに向かう。

すでに外は明るかった。

今日も太陽が昇っている。

それがよかった。雨だったら気持が晴れなかっただろう。

昨日のコーヒーにミルクをいれて、キッチンカウンターにこしをかける。

コーヒーをいれるとなんだか落ち着く。

コーヒーを飲みながら、窓の外を眺めていると、なんとなく誰かに見られている様な気がした。

首筋のところにまとわりつく視線。

 

きになって部屋の中を念のため見回した。

クローゼット、トイレ、バスルーム、玄関、そして寝室。

狭い部屋だから点検は早く終わったが、案の定、誰もいなかった。

へんな夢をみたせいかもしれない。気のせいだろう。

そう思いたかった。

 

ただこのまとわりつく視線。

どこかで感じたことがあるような気がした。

どこでだったか、わからない。

ただ、感じたことがある視線、そして状況。

 

そのとき、首筋に誰かの息がかかったような感覚があり、思わずはっとする。

首筋から背中につつと唇が這う。

思わず、目を閉じた。

何故だか拒めずにいた。

相手をわかっているような気がしたからだ。

ずっと求めていたあの人。

それは前のボーイフレンドではない、あの人。

頭の中に、低い声が聞こえてくる。

―そのまま気持にまかせて。

その声を聴くたびに、首筋が全身が震える。

思わず腰がういた。

 

これが現実なのか。夢なのか。

わからなかった。

ただ気付いたときは、ベッドの上にいた。

遠くのほうでいつもの目覚ましが鳴り、片手でとめる。

そして体をぐっと伸ばし、コーヒーを飲みに起き上がった―