そう、あの日は雨だった。

昼下がりの午後。

窓に椅子を置いて、
コーヒーを飲みながら、読みかけの本を読んでいく。

本の切れ目でコーヒーを飲もうとしたとき、
カップに残っていないことに気付いた。

時計をみると、午後3時。
もうこんな時間か。

背伸びをして窓を見ると、
まだ窓の外は、雨が続いていた。

外の様子をみたくて、
わたしは人差し指でそっと窓ガラスを拭く。

すると、窓の外に誰かがいるのに気付いた。

そこは、お隣の庭だった。

いつもは人がいないのに、
珍しいな、と思って思わず見てしまうと、
あることに気づいた。

庭にいる人物が、こちらを見ていることに。

あわてて、顔を背ける。

気付かれてしまっただろうか。

―たぶん、気付かれたと思う。

もしかしたら今まで気付いたのではないだろうか。
こうして、わたしが見ていたことに。
(完)