目覚ましがなる前に目覚めた、休日。
朝から出かけることになっていたので、
いつもより早く起きて、支度をした。
いつもより念入りに。
出る時間だとわかり、
ちょっとあわてて鍵を持って、
ドアを開けようした、まさにそのとき。
携帯電話が鳴った。
あの日の会話は今でも覚えている。
そう。予定がなくなってしまった。
せっかくのデートだったのに。
鍵をテーブルに置くと、椅子に座り込んだ。
・・・なんだか疲れてしまった。
朝からバタバタしたせいかもしれない。
それよりも、せっかくの休日が、
すべて空振りになった。
さてどうしたものか。
ふと気付くと、いりたてのにおいがした。
ああ、そうか。コーヒーの時間か。
自然と体がキッチンに歩き出す。
白いカップにいれたてコーヒーが入る。
湯気と香りが鼻をくすぐり、ちょっと心地よい。
今日もちゃんと約束どおり、
コーヒーマシーンは、コーヒーを作ってくれた。
―約束を守ってくれたらいいのに。
そんな願いは叶わないもの。
一生、叶うことはないのだ、
と私はどこかでわかっていたのだ。
なのに、期待してしまった。
もしかしたら、いつか約束をまもってくれるかもしれない。
そんな甘い期待だったのだから。
わたしはコーヒーを口につける。
苦い味が口の中に広がった。
―約束なんて、しなければよかった。
ぽつぽつぽつ・・・。
どこかで小さくたたく音がした。
思わず顔を上げて、窓に近寄った。
雨のしずくが、窓を強く打ちはじめた。
(完)
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**解説**
「雨」「朝」で書き出してみました。
書いていくうちに、なぜか失恋モードに ;^^)
定番すぎるかもしれませんが、まあ、別れと雨は似合いすぎます。